episode. 4

里山の中で、自然とつながり
四季を感じる暮らしを。

里山の中で、自然とつながり
四季を感じる暮らしを。

清水 亮さん、優子さん

丹波篠山の山間の集落にあった古民家を改修した清水さんのご自宅。
子育てをきっかけに、ご主人の地元である篠山へUターンした後、3、4年かけて住む場所を探した末に出会ったのがこの家でした。
純粋な伝統工法によって建てられた家屋は、梁や柱に立派な木材が使われていました。土地の湿気によって床や柱の足元の傷みが進んでいたものの、大規模な改修によって新たに蘇りました。
「自然のなかで四季が感じられる、贅沢な暮らしをしていると思う」と話す清水さんに、家づくりを振り返ってお話を聞きました。

竣工:2024年9月
ご家族構成
清水 亮さん(カメラマン)、優子さん、長女、次女

佐藤さんの言葉で思い出した、
大切にしたかったこと

リビングダイニングの窓からは庭とひとつながりの里山の景色が広がる

— 清水さんの家づくりは、どんなふうに始まっていったのですか。

優子さん:上の子がお腹にいた頃だったと思います。

亮さん:当時は大阪の茨木市に住んでいて、子育てをどこでするかを話していました。そのときに妻が「みんなに見てもらいながら子育てしたいね」と言ってくれて。それがきっかけで、僕の地元である篠山にUターンすることに決めました。
実際に土地を探し始めたのは、上の子が生まれてからだったよね。

優子さん:そうね。

— ハンドワークスとは、どのように出会われたのですか。

優子さん:結婚式の引き出物を探しに、今田町の宮ノ北窯に伺ったことがあったんです。

そのときに見たお家が、とても素敵で。

後ろの山の風景とも自然に馴染んでいて、すごくかっこよくて印象に残りました。

奥様にお話を伺うと、「ハンドワークスの佐藤さんにお願いしたんです」と教えてくださって。
忘れないように、その家の写真を携帯の待ち受けにずっと保存していたんです。

里山の風景が季節の移り変わりを教えてくれる

優子さん:以前、NETFLIXにあった、世界の変わったお家を見にいく番組が好きでよく見ていたんですね。結構奇抜な家が多いんですけど、「景観になじむ家が美しい」という言葉があってすごく共感したんですよね。究極を言えば、こんなところに家があったっけみたいな、そういうところがいいなって。

実際にどんな家を建てたいか考えはじめたとき、住むとなったら寒いのは絶対に嫌だと思ったんです。私は宮崎の生まれで、篠山の寒さが気になっていて、機能性重視なら北欧系の輸入住宅がいいかなと思ったことがありました。

実際にそちらも見に行って、でもやっぱり佐藤さんも気になって。そんな内容を書いて、佐藤さんにメールしたんです。

佐藤さんからのお返事には「里山の風景に北欧の建物を建ててほしくない。北欧の家具はもちろん僕も好きだけど、景観を作っていくことも意識してほしい」というようなことが書かれていました。 

なんかこう、ビシッと来たんですよね。そこに惹かれたし、自分の大事にしたかったことも思い出されて。そういう思いを持っている方って素敵だなって思って、佐藤さんに会いに行きました。

佐藤:今お話を聞きながら思い出していました(笑)。そうでしたね。

優子さん。暮らす場所としてのイメージを描き続けていた。

— 実際にお会いしたときの印象はいかがでしたか。

亮さん:初めてお会いしたのは、事務所に伺った時なのか、初めに家を建てようと思っていた土地を見にきてもらった時だったか、はっきりと覚えてないんですが、帰りには「この人にお願いしよう」みたいな感じになっていたよね。

優子さん:お会いしたら、思っていたより優しくて(笑)。佐藤さんて、なんか一定なんですよね。住宅メーカーの営業の方とは違って、盛り上がりすぎることもなくて、ずっと一定。その感じに、私はなんか安心感があったんですよね。

佐藤:そうですか。自分ではちょっと意外です。

住みはじめてから深まっていく暮らし、いとなみ

亮さん:話し出すまでは職人さんという感じがあったんですが、話してみるとすごく優しい方だなって。僕は思いを伝えるのがあまり得意じゃないんですけど、抽象的に伝えて、汲み取ってもらえたらいいなぐらいの感じで話をしても大丈夫そうだと感じましたね。

佐藤:ピンポイントに指示されるよりも、抽象的なイメージみたいなところから話してもらって、それをこちらでも咀嚼して、また提案するというやりとりの方がいいですよね。多分これは僕だけじゃなくて、建築を考える人なら総じてそうだと思います。

— 佐藤さんからお二人の印象は。

佐藤:宮ノ北窯の家を、特に外観が良いと評価してくれていることに驚いたし、すごく嬉しかったですね。実際に話してみて、生活を大事にされているお二人なんだなって伝わってきました。

この家に住みたいという思いに、
できるかぎり寄り添って

築100年を超え、長らく空き家だった家。外観にはほとんど手を加えていない。

亮さん:はじめにここに建てようと思っていた土地は色々な理由で考え直すことになったけど、佐藤さんにお願いすることは僕たちの中では決定事項でした。新しい場所が見つかったら、佐藤さんにも来てもらって、新築なのか、改装するのか、その相談も含めてやりとりが進んでいったように思います。

— 何軒か一緒に見られたんですね。

佐藤:そうですね。

— こんな場所がいいというイメージはあったんですか。

亮さん:せっかく篠山に来ているんだから、住宅地の中より山が見えたり自然が感じられる場所がいいなとは思っていました。

亮さん。この家との出会いには運命的なものを感じたという

— 3、4年ほど探されて、こちらの物件に出合われたときのことは覚えていますか。

優子さん:覚えています。この辺りは景色が綺麗だし、四季も感じられて、すごく静かでいい場所だなって思っていたんですよ。近くのお蕎麦屋さんにもよく行っていたし、場所自体も素敵で。

亮さん:そのお蕎麦屋さんに、ここが空いてるって教えてもらったんです。その足でここに来ると、西日がぱぁっと入り込んでいて空間がすごくいいなって。ボロボロだけど、まだ家が生きている感じがしたんですよね。

この建物が改修できるかどうかは、僕には判断ができないので、佐藤さんに聞いてみようって。

亮さんが魅かれた場所は、家族のダイニングスペースとなった。

— 実際に見てみていかがでしたか。

佐藤:うーん、なかなかでしたね。この家のある場所は、地形的に目の前の田んぼよりも低くて、また小川もあって、湿気の影響で床は抜け落ちていて、柱の下の部分は特に激しく傷んでいましたね。建物を支えていた建具は荷重で曲がっていました。

ただ、当時の清水さんの印象は、相談というよりも、ここにしたいというニュアンスが強かったように思うんです。そういう直感も大事じゃないですか。

亮さん:学生の頃にこの辺りにアルバイトに来ていたり、この場所のことは良く知っていたし、縁を感じていたんですよね。佐藤さんなら、本当にダメならそう言ってくれるだろうなって思っていたので。

改修前の痛んだ柱

佐藤:足元の劣化はすごかったけど、目線から上は頑丈なままだった。そこがポイントで、絶対にやめたほうがいいとは言い切れなかったですね。

使われている梁も素晴らしくて、足元さえ改善できたらこの家は成立するだろうなって。
その代わり、結構大掛かりなことになるなとは思っていました。

実際には、家全体をジャッキアップして、35cmほど土を入れて基礎を全て新しくして、家の柱も傷んでいるところを入れ替えて、家全体としては70cmほど嵩上げしました。

寒さも気にされていたんで、居住スペースの天井の上に断熱材を敷いて、生活スペースの保温性を作っています。

屋根を支える見事な梁
建物全体を持ち上げている様子
根継ぎという伝統工法が施された柱

その家を構成する一つひとつに最適解を探して

— 家づくりで印象に残っていることはありますか。

亮さん:補助金を申請する期限がけっこうギリギリだったんですけど、佐藤さんには急いでもらうよりいい仕事をしてもらいたいしって、葛藤していましたね。結果的には補助金も無事に受け取れました。

— 優子さんはいかがですか。

優子:そうですね。私が思っていた家づくりのフローとは違っていたなって。友人の話やSNSでみていても、図面が最初にバーンと出来上がっていて、全部決まってからスタートしていくのかなって思っていたから。

佐藤さんは作りながら、ここはこうしたら良いんじゃないかって想像を膨らませながら、提案してくれる方なんだと気づいたのは、途中からでしたね。

子ども部屋。とびらの上は吹き抜けで、家全体がつながっている

佐藤:家づくりにあたって、良いなと思う写真、気になる写真を送っていただくんですね。清水さんの場合は、建物の写真もありましたが、半分くらい暮らしに焦点が当たった写真でした。縁側にみかんだったり、どちらかというと暮らし始めてからのイメージが浮かぶような。それもあって、食のこだわりだったり、どういう生活をされたいかは伝わっていましたね。

であれば、そういうスペースが設計に求められますし、ここは街まで距離があるのでストックする場所がいるだろうなとか。建築というより生活者としての目線を大事にして、間取りを提案していたように思います。

優子さん:そうだったんですね。

佐藤:設計でここをダイニングにすると決めたら、そこが食事を取る場所になりますから。押し付けにならないようにしたいと、いつも気をつけています。

キッチン裏はストックスペース。勝手口からの動線もひろく確保されている

里山の自然とつながりはじめた、日々の暮らし

木の建具の窓とソファーは二人さんの好みを汲んで、ハンドワークスで作ったもの

— 暮らしはじめて1年と少し。今どう感じていますか。

亮さん:季節が一度ぐるっと回って、四季を感じるできごとがある度に、この家になじんでいくように思います。今年は家の前の田んぼを借りて、育てたお米を食べたり。先日、雪が積もった日に、娘たちが庭で遊んでいる姿を見た時には、贅沢な暮らしをしているなって心から思いました。

優子さん:娘たちもこの家が大好きで。「この家は佐藤さんが建てたんだよね」とか、旅先にいても「早く篠山のお家に帰りたい」って言っています。

佐藤さん:嬉しいですね。

篠山で、家族の日々が積み重なっていく

優子さん:住みはじめる前に思っていたより、明るくてあたたかくて、すごく落ち着きますね。ダイニングに座って、ぼんやりと窓の外を眺めている時間が好きです。

季節がめぐってあちこちに野草が生えて、そういうことに気付けるようになると「ここは宝の山だな」って思うんです。この場所に住み始めて、家庭菜園で野菜やハーブを育てるようになりました。季節の手仕事として味噌作りや梅仕事をしたり、薬草の力を借りて身体を整えたり。里山の自然と共存していく暮らしが無理なくできていて。

こうした営みを特別なものにするのではなく、子どもたちに日々の暮らしの営みとして受け渡していけたらいいなって、今は考えています。

設計・施工:ハンドワークス

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